FESSとMELの腰部脊柱管狭窄症に対する治療成績の比較

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Comparative study between full-endoscopic laminectomy and microendoscopic laminectomy for the treatment of lumbar spinal canal stenosis
Hiroki Iwai, Hirohiko Inanami, Hisashi Koga
Journal of Spine Surgery Vol 6, No 2 (June 2020)
http://jss.amegroups.com/article/view/5030/html

岩井グループから発信した世界初のDPELスコープによる腰部脊柱管狭窄症の治療成績の比較論文です。

岩井グループではこれまで腰部脊柱管狭窄症の治療は主にMELで行ってきました。これも素晴らしい治療方法なのですが、近年FESSでも腰部脊柱管狭窄症の治療が可能になっております。この方法をMELに対してFEL(full-endoscopic laminectomy、完全内視鏡椎弓切除術)と呼んでおります。この論文では同時期に行われたMELとFELの治療成績を比較しておりますが、できるだけ手術対象が同じになるように一椎間で片側進入両側除圧を行ったものに限定して解析しております。また手術時間などは医師の技量に依存するのでMELは当院で4年以上手術を行っている医師に限定して54例を解析致しました。一方、FELは古閑が直径6.4 mmのworking channel(鉗子類を出し入れする内視鏡のスペース、大きいほど大きな鉗子類を出し入れできるので、より広範囲の摘出がしやすい)の内視鏡を使って治療した初期60例を対象に致しました。

様々な項目を比較したのですが、治療効果に関しては患者さんの痛みの程度と術後満足度で比較しました。その結果MELとFELの間に有意差は認めませんでしたが、患者さんの術後3か月の満足度はMELが6.9に対してFELが7.5でした(0から10までの11段階の評価で10が最高の満足度です)。手術時間に関してはMELが54.6分に対してFELが77.8分とMELが有意に短い手術時間でした。しかしながら、これは77.8分が長いのではなく、岩井の熟練した医師の54.6分という数字が短いことはこれまでの腰部脊柱管狭窄症治療の論文を読むとわかります。またこれは古閑の初期FELの成績であり、現在は更に短縮されております。在院日数に関してMELが4.7に対してFELが2.1で、FELが有意に短いという結果でした。合併症に関してはMELで硬膜損傷が多く、FELでは血腫が多いという傾向でした。まとめますと、FELはMELに劣らない素晴らしい治療方法であることが示されたと思います。現在この結果を踏まえ、更なる手術手技の改良に取り組んでおり、今後更に良い治療成績を報告できればと考えております。

この論文はフリーでダウンロードが可能です。英語の論文ではありますが、ご興味のある方は全文を見て頂ければと思います。特に手術中の止血操作にテクニックは動画として配信しており閲覧が可能です。

研究方法は後ろ向き研究というもので、同時期に手術した患者さんで様々な条件に合致し3か月以上フォローできた症例で行っております。この図はこの研究の流れで、論文の図1として使用したものです。

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古閑比佐志

古閑比佐志

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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