黄色靭帯骨化症による腰部脊柱管狭窄症のFESSによる治療

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Full-Endoscopic Spine Surgery for the Treatment of Lumbar Ossification of the Ligamentum Flavum: Technical Report.
Hiroki Iwai, Hirohiko Inanami, Hisashi Koga
World Neurosurg. 2020 Jun 26:S1878-8750(20)31390-5.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1878875020313905?via%3Dihub

岩井グループから発信した世界初のDPELスコープによる治療の論文です。

この論文では腰椎での黄色靭帯骨化症という病気(脊柱管の背部にある黄色靭帯が骨化して硬膜管や神経根が圧迫されて馬尾や神経根症状が生じます)に対してもFESSが有効であることを論じています。7例の腰部黄色靭帯骨化症の患者をFESSで手術しました。2種類のworking channel(鉗子類を出し入れする内視鏡のスペース、大きいほど大きな鉗子類を出し入れできるので、より広範囲の摘出がしやすい)の内視鏡をうまく使い分けて治療を行いました。黄色靭帯骨化症にはその形によってround-type(丸くて硬膜との癒着が少ない)とbeak-type(鳥のくちばしのようにとがっていて硬膜との癒着が多い)がありますが、片側性のround-typeは、従来から用いられている内視鏡(working channelの直径が4.1-mm)で安全に手術できることがわかりました。また両側性のround-typeでも中心性狭窄をきたしていず神経根症状だけなら、片方ずつの手術になりますがworking channelが4.1-mmの内視鏡で治療が可能でした。一方、round-typeでも両側性で中心性狭窄になり馬尾症状を呈している場合は、少し太いDPELスコープ(working channelの直径が6.4-mm)で治療する方が、手術時間も短時間で済み患者さんの負担が少ないことが明らかとなりました。beak-typeの1例で硬膜損傷をきたしましたが、わずかな損傷でこれに起因する障害は発生しませんでした。またこれも十分回避できた可能性があります。

従来法による黄色靭帯骨化症の治療は、硬膜損傷が大きな問題でした(骨化した靭帯と硬膜が強く癒着するため、骨化した靭帯を切除した際に硬膜が破損することがある)。しかしFESSで術野を拡大して観察したり、様々な方向から観察することで(斜視鏡になっているので、内視鏡を回転させることで眺める方向が変化する)、硬膜損傷の回避が可能になるものと考えております。

残念ながらこの論文はダウンロードが有料のため、同様の症例のCTをお見せして、黄色靭帯骨化症へのご理解を深めてもらえればと思います。

片側性の黄色靭帯骨化症[round-type(丸くて硬膜との癒着が少ない)]のCT画像(上段術前、下段術後)

黄色矢印の部分が骨化した靭帯部分、この症例は右の靭帯だけの骨化で神経根症状(下肢痛)を呈していました。working channelが4.1-mmの内視鏡で治療し、下肢痛は消失しました。

片側性の黄色靭帯骨化症[beak-type(鳥のくちばしのようにとがっていて硬膜との癒着が多い)]のCT画像(上段術前、下段術後)

黄色矢印の部分が骨化した靭帯部分、この症例は左の靭帯だけの骨化で神経根症状(広範囲な下肢痛)を呈していました。working channelが6.4-mmの内視鏡で治療し、下肢痛は消失しました。

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古閑比佐志

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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