岩井副院長の論文紹介:腰椎固定術後の隣接椎間障害に対するFESSでの治療の試み

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岩井FESSクリニックの岩井副院長が筆頭著者の論文が、Journal of Spine Surgery (JSS)にアクセプトされ掲載されることになりました。最近はインターネット経由でどの雑誌でも出版前の論文が見れるようになっています。JSS のサイトのOnline Firstというところからこの論文もご覧になれます。http://jss.amegroups.com/article/view/4675

A less invasive treatment by a full-endoscopic spine surgery for adjacent segment disease after lumbar interbody fusionというタイトルの論文ですが、翻訳しますと「腰椎固定術後の隣接椎間障害に対してFESSは有効である」ということになります。

「隣接椎間障害(ASDと略します)」とは腰椎をスクリューで固定すると、固定した前後の椎体骨との間で椎間板ヘルニアや椎間孔狭窄(神経根が脊柱管から下肢へ向かって出ていく部分で圧迫され神経根障害を起こすこと)が生じることです。これまではASDに対しては固定術をその前後へ延長するなどの、侵襲の高い手術が行われてきました。

岩井副院長はこの論文の中で、2015年9月から2019年3月までにASDをFESSで治療した13例を解析し、FESSがASDの治療として効果的であることを示しています。ただしその治療効果(痛みの軽減や、歩行など下肢機能の回復)は、これまで岩井医療財団から発表してきたASDでない椎間板ヘルニアや椎間孔狭窄に対するFESSの治療成績よりは劣っていることも示しています。また1回のFESSで症状の回復が不十分で複数回のFESSを要する症例も3例あったことも示しています。

このことからFESSによるASDの治療は、通常のヘルニアに対するFESSほど容易ではありませんが、更なる固定の延長術を避けるために、まずは検討すべき低侵襲な術式ではないかと結論しています(入院期間も手術時間も固定の延長術と比較するとはるかに短いし、時手術合併症の頻度も低い)。これまでの経験から、ASDを生じた椎間関節の角度が鋭角だったり、関節内のガス像が認められるような症例では、たとえ腰椎機能撮影(腰を曲げたり伸ばしたりして骨のずれが生じないかチェックする単純X線撮影方法)で大きなずれが生じなくても、FESSの効果が期待できない場合もあることも解ってきました。

FESSで必ず治療できるわけではありませんが、ASDで固定の延長が必要と言われた方でも、FESSの適応がないかどうか一度ご相談頂ければと思います。

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古閑比佐志

古閑比佐志

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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