ヘルニコアの論文

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Chemonucleolysis with chondroitin sulfate ABC endolyase as a novel minimally invasive treatment for patients with lumbar intervertebral disc herniation.
Ishibashi K, Iwai H, Koga H.
J Spine Surg. 2019 Jun;5(Suppl 1):S115-S121. doi: 10.21037/jss.2019.04.24. Review.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31380500
図1
図1

この論文はレビューと言ってoriginal article(自分で研究をデザインしてデータを集積・解析したもので、普通に言うところの「論文」)とは異なり、あるテーマに沿ったoriginal articleを多くまとめて解析し、まとめた時点でのコンセンサスを記載したものです。今回はヘルニコアという商品名の新しい椎間板ヘルニアの薬剤に関してまとめました。この薬の薬剤名は(chondroitin sulfate ABC endolyase)で、細菌が産生する酵素です。図1で示しているように、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸という椎間板内の髄核(これが飛び出したのが椎間板ヘルニアです)を構成する分子の重合鎖や糖鎖を切ることで、その周囲に結合している水分子を取り除く作用があります。その結果、髄核が退縮して飛び出した椎間板ヘルニアが、小さくなるという薬剤です(この薬剤で小さくさせることを「Chemonucleolysis」と言います)。過去にキモパパインという酵素が実際の患者さんの治療に、主に米国で用いられたことがあります。治療成績はある程度出たのですが、副作用でその治療は終わりました。それはキモパパインが椎間板外の周囲に漏れると、神経なども含めて他の組織に働いて、大きな問題になったからです。しかしヘルニコアは入念な基礎実験が行われて、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸以外に損傷を与えないことが解っています。我々の施設はかなり多くの症例をこなしておりますが、合併症なく安全に実施できています。このレビューを読んだ外国の方から日本発のこの薬剤への期待が膨らみ、海外へも上市できることを期待しております(現在は日本でしかこの治療は受けられません)。なお我々の施設は多くのヘルニコアを経験することで(当グループの実績)、ヘルニコアよりやはりFESSなどの手術での治療の方が適切である症例の、区別ができるようになってきました(現在、当グループの医師が論文執筆中)。ヘルニコアの治療をご希望であれば、一度お問合わせ頂ければと思います。

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古閑比佐志

古閑比佐志

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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