キャダバートレーニング

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Chulalongkorn 大学のトレーニングセンター前での集合写真
Chulalongkorn 大学のトレーニングセンター前での集合写真

私たち医師が手術の技術を磨くのには様々な方法があります。以前は何年も先輩医師の助手をして「見て覚えろ!」なんて時代も確かにあったと思います。しかし最近ではバーチャルな技術や手術模型の開発などが進んで、実際の手術以外にも技術を学ぶ機会が増えております。以前豚を使わせてもらい技術を高めるお話をしたことがありますが、今回は実際の人体(キャダバー(cadaver);医学部での解剖実習用のご遺体)を使ったトレーニングのお話です。

日本でも最近やっと人体を使った手術トレーニングが可能になってきましたが、まだまだ機会が少なく、海外でのトレーニングが一般的です。私もアメリカ・台湾・タイなどでキャダバートレーニングを行ったことがありますが、タイへはほぼ毎年出かけております。低侵襲・内視鏡脊髄神経外科研究会という脳神経外科医が中心になっているFESSの研究会が、若手の技術向上のために年1回行っているものです。僕は講師として参加して4人一組になって、1体のご遺体と対峙します。ほぼ丸々2日間、様々なFESSのアプローチを試させてもらうのですが、最後は本当にふらふらになりながら終了しております。豚は人間に最も似ていると言われていますが、少なくとも脊椎に関しては四足歩行であるため、かなり異なっております。FESSが骨の隙間を経由して内視鏡を挿入していくため、安全な手術手技の取得にはやはり人体でのトレーニングが欠かせません。今回参加された先生方も、きっと実際の手術に自信をもって立ち向かえると思います。実際の患者さんへ鍛えた技術を返すことが、解剖させて頂いたご遺体への最大のご供養になると思います。

また、このようなトレーニングでは実は多くの裏方のご尽力が必要です。会場やホテルの手配から、道具を準備したり環流の水を替えたり最後の片付けまで、ご協力いただいた企業の皆様、本当にご苦労様でした。この場をお借りして深謝いたします。

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古閑比佐志

古閑比佐志

資格・所属学会
日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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